介護業界のSNS採用:資格者に届く発信の作り方

公開日: 2026-08-22

デイサービスと訪問介護を持つ法人で、求人媒体の反応が鈍り、「SNSをやろう」という話になる。提案書は2社ぶん手元にあるけれど、載っている施策はどちらも似ていて、どこで判断すればいいのか決めきれない——介護業界の採用担当者から、この段階の相談をよく受けます。この記事では、有資格者と未経験者で発信をどう分けるか、現場撮影の同意をどう設計しておきたいか、そして提案書を比べるときに何を確認して結果をどう解釈するかまでを整理します。読み終えたとき、社内で説明できる判断軸が手元に残る状態を目指します。

有資格者と未経験者を1本の発信で追うと、どちらにも届かない

最初に決めておきたいのは、このアカウントで主に誰を動かすのかという配分です。介護福祉士や実務者研修修了者といった有資格者と、異業種からの未経験者では、そもそも見ている情報がまるで違います。有資格者は転職市場で選ぶ側にいて、比較軸は配置・夜勤回数・記録の仕組み・キャリアの伸び方。未経験者が知りたいのは、自分でも続けられるのかという一点です。

同じ投稿で両方に届けようとすると、「アットホームな職場です」のような、どちらにも引っかからない中間地帯に落ちます。実務としては、アカウントは分けずに投稿シリーズを分け、プロフィールの固定投稿で入口を二つ用意するのが扱いやすい。ここで社内が揉めるのは「トーンがバラバラに見える」という指摘です。揃えるべきは口調や色味であって、語る内容の深さは求職者ごとに変えてよい、と最初に合意しておくと後の議論が短くなります。

有資格者に効くのは共感ではなく、判断材料の粒度

有資格者向けの発信で成果が出ないアカウントは、たいてい「介護のやりがい」を語りすぎています。同業への共感は集まりますが、転職の意思決定は動きません。彼らが知りたいのは、たとえば夜勤帯は1ユニットを何名で回しているか、記録はどの端末で入力し1件あたりどれくらいかかるか、入浴介助の人員体制はどうか、といった具体です。

危険な兆候は、コメント欄が同業からの応援や絵文字ばかりで、プロフィールへの遷移が伸びないこと。共感コンテンツとして消費されているサインです。良い兆候は、保存数とプロフィールクリック率が同時に上がること。保存は「後で条件を見返す」行動なので、検討層の反応として信頼できます。フォロワー数の増減だけを毎月報告してくる運用は、この区別がついていない可能性があります。

未経験者には「入職後3か月」を見せる

未経験者の応募が止まる原因の多くは、認知ではなく想像がつかないことにあります。効くのは、研修カリキュラムの実物、入職半年の職員が実際に任されている範囲、失敗したときに誰がどうフォローするか。抽象的な「未経験歓迎」より、3か月後の自分が像を結ぶ材料のほうが動きます。

ここで社内が割れるのが、夜勤や排泄介助といった負荷の高い業務を出すかどうかです。経営層は「印象が悪くなる」と渋り、現場は「隠すから辞める」と言う。私たちが見てきた範囲では、隠した場合に応募数は増えても、面接後の辞退と早期離職に振り替わるだけでした。判断の指標を応募数から一次面接後の辞退率に移すと、この議論は数字で決着させやすくなります。

撮影の同意は、利用者・家族・職員の三層で組む

介護現場の撮影で後から問題になるのは、撮影そのものより同意の設計です。利用者本人、家族やキーパーソン、そして職員。この三層それぞれに、用途(どの媒体に、どんな形で)、範囲(顔出しの有無、氏名、加工の程度)、期間、そして撤回の手続きを書き分けておきたい。「モザイクをかけるので大丈夫」で止まっている運用は、判断が甘い側に寄っています。

見落とされがちなのが、退職した職員が写り込んだ過去投稿の扱いと、撮影素材を運用会社側がどこにどれだけ保管するかです。商談ではそのまま次のように聞いてみてください。「撮影データの保管場所と保管期間、契約終了後の削除手順を教えてください」「同意の撤回連絡を受けてから公開停止まで、どんな手順で何営業日かかりますか」。この2問に手順として答えられる相手は、介護や医療の現場を経験しています。逆に「都度対応します」で流す場合は、運用ルールが固まっていないと見てよいでしょう。

撮影当日の実務も少し。撮影日は事前に掲示し、当日はフロアに社内の立会担当を置く。ケア場面そのものより、申し送り、記録入力、休憩中の会話のほうが、映り込みのリスクが低く、しかも有資格者には刺さります。

内製か外注かは、承認が何日で回るかで決まる

媒体選びは求職者層に従います。有資格者の中途はInstagramやLINEでの比較検討、若年層の未経験はショート動画が入口になりやすい。ただし地域によって差が出るので、初期は2媒体までに絞って反応を見るほうが学習が早いはずです。

内製できるかどうかの分岐は、撮影に出られる職員の月あたりの確保時間と、承認フローの速度です。投稿一本の承認に1週間かかる組織で内製化を進めても、鮮度が落ちて続きません。この場合は承認ラインを簡素化するか、外部と組んで型ができてから巻き取るほうが現実的です。伴走型で外注する際の落とし穴は、契約書の納品物に「引き継ぎ資産」が入っていないこと。台本テンプレート、撮影リスト、指標の読み方の手順書が最終的に手元へ残る条件かどうかを、契約前に確認しておきたいところです。

見積もりは金額より、内訳と変動要因で比べる

介護のSNS運用費は、企画、撮影(訪問回数と拠点数)、編集本数、分析とレポート、広告費という内訳で構成されます。金額が動く要因は、拠点が複数あって移動が発生するか、早番・遅番に合わせた時間帯撮影が要るか、同意書の整備をどちらが担うか、といった点です。編集本数だけを揃えて2社を並べても、比較になりません。

商談で使える質問はこの3つ。「この見積もりで、撮影の訪問は月何回、1回あたり何時間ですか」「同意書の整備と回収は、御社と当法人のどちらの範囲ですか」「最初の3か月、応募数以外に何を見て改善しますか」。3つ目で、保存率やプロフィール遷移、採用サイトへの流入といった中間指標を挙げてくる提案は、立ち上がり期の設計ができています。応募数の増加を口頭で強く約束してくる場合は、その根拠と前提条件を書面で確認しておくと安全です。

まとめ

明日やることを2つに絞るなら、まず有資格者向けと未経験者向けの求人票を並べ、訴求として使える具体(配置、夜勤体制、研修の中身)を洗い出すこと。次に、利用者・家族・職員の同意が現状どこまで取れているかを棚卸しし、足りない層を特定することです。この2つが揃えば、提案書の良し悪しは自分で判断できるようになります。

私たちトレプロは600社以上の採用SNS運用に関わり、企画から撮影・編集・分析まで、将来の内製化を見据えた伴走も行っています。判断に迷う論点が出てきたときの相談先として、頭の片隅に置いていただければ十分です。

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